すすきのビギナーの恋vol.4:ドキドキ。初めての札幌デート。

すすきのJIS 前回までのあらすじ

30歳にして札幌に移り住み、友人が新しく設立したゲームアプリの制作会社で働き始めた純。最初は札幌の街を観光気分で楽しむも、段々と知り合いが少なく恋人もいない状態に寂しさを感じ、仕事のストレスも溜めこんでいくようになる。そんな中、1人で行ったバーでの出会いから純は直樹という年下の青年と初めて札幌の街コンに参加する。最初はその規模と盛り上がりに興奮するも、次第に上手く女性を引き付けられず直樹に良いところを持っていかれる状況にガッカリし、もういいやと諦めてしまう。だがそうして会場で1人でいたところに好みど真ん中の女性、雪乃が話しかけてくれ、仲良くなって連絡先も交換するという幸運に恵まれるのだった。

街コンで知り合った彼女との初デートが、決定!

「じゃあ今度の土曜日、よろしくお願いします!」 街コンで出会って仲良くなった雪乃さんから連絡が返ってきたのを、僕は仕事の合間に行ったトイレの中で確認した。街コン後に雑談も交えて何度かやり取りし、ようやく具体的なデートの約束にこぎつけたのだ。札幌に来て、初めてのデートだ。よし!思わず声にも出しつつ、ガッツポーズが自然に出た。興奮が抑えられなかった。それでもどうにか静め、自分のデスクへと戻った。だけど嬉しさを隠しきれず、顔や態度に出ていたのだろうか?

「何か良いことあったろ」

喜多村にニヤニヤされながら、そんな風にからかわれたりされてしまった。いやいやそんなことないよと誤魔化そうとしたが、おそらく誤魔化せてはいないだろう。喜多村は感が鋭くもあるし。でも…少ししてそれよりももっと大きな問題があるのに気付いた。

札幌のデートって、どこに行けばいいんだ?

それが僕には、全然わからなかった。 自分で色々考えたりネットで調べたりしても上手いことデートプランが立てられなかった僕は、直樹くんに相談することにした。職場が同じで雇ってもらっている喜多村に聞くよりも、プライベートだけの繋がりで最初からそういう部分もあけっぴろげに知り合った直樹くんのが全然相談しやすかった。そして電話をかけて相談すると、思わぬ提案をされた。

「そんなら向こうに案内してもらえばいいんじゃないですか?」

スマホをいじる純

と言うのだ。   えぇ、それでいいの?ガッカリされない?と戸惑ったが、向こうは地元民でこっちは札幌に住んで間もないなら相手の方が詳しくて当然だし、喜んで案内してくれるというのだ。実際に直樹くんは、その手法で何回か地元の女の子とデートしたが、全く問題はなく盛り上がったとのことだった。確かにそれもそうだし、それでいいかな。年下だけど僕よりも経験も豊富で上手そうな直樹くんが言うんだから、従ってみよう。ちなみに直樹くんはあの街コンで6人と連絡先を交換し、その内の半分くらいとはデートできそうらしい。凄いや、僕にはマネできない。

そして雪乃さんに勇気を振り絞って、『札幌の街はまだあまり知らないので、案内してもらってもいいですか?』と送った。そしたらすぐに『良いですよ!お薦めの場所、案内しますね』と返事が来た。おぉ、上手くいった。ありがとう直樹くん。デートは男が計画を立てるものだと思っていたけど、それにこだわり過ぎるのもダメだな。女の人にプラン立ててもらってデートするってのも、どこに連れてってくれるか楽しみで良さげじゃないか。僕はますます、初めての札幌デートが楽しみになった。

初デート当日。久々に感じた胸のトキメキ…

初デートの前日の夜、僕は中々寝付くことが出来なかった。ドキドキして凄く楽しみという気持ちもあるが、それだけでなくもし失敗とかして嫌われたらどうしよう、という不安な気持ちも大きくなっていった。どうしよう、本当に平気かな。プランを雪乃さんに任せちゃったこともあって、ほとんど何も考えてないし…。あぁ、それに早く寝なきゃ!寝不足のままデートに行くことになったら間違いなく酷いことになってしまう。そんな風に葛藤しつつどうにか寝ようとし、最終的には少しは寝ることができた。熟睡して寝起きバッチリ、とまではいかなかったが、今回はしょうがない。最低限はクリアしたから、いいだろう。

 

そしてデート当日になって、街コンの時の失敗を繰り返さないようにキメ過ぎないキレイ目の服装をチョイスし、少し早めに家を出た。雪乃さんが待ち合わせ場所に指定してくれたのは、札幌の大通公園の西3丁目の噴水の前だった。 「そこから見える景色は凄く良いから、ぜひ純くんにも見て欲しいな」 そう雪乃さんが言っていたように、中々良い景色だった。噴水越しに札幌の名所の1つであるテレビ塔が見える。今日は良い天気だし、気持ちも良い。せっかくだし、写真にも撮っておこうかな。そう思って自分のスマートフォンを取り出して良い写真はどの場所から撮れるだろうかと試行錯誤している時だった。

大通り公演

 

「この場所、気に入ってくれた?」

げっ、と思って振り返ると、口元を手で隠しつつもニヤけているのが伝わる雪乃さんが立っていた。何だかミーハーな感じを見られてしまったようで気恥ずかしくなった僕は慌ててスマートフォンをしまってしまう。写真はまだ撮ってないのに。でもそしたら貸してという風に雪乃さんに催促され、結局再び取り出して雪乃さんに渡した。そしてカメラを撮るモードに半強制的に操作させられたと思ったら…。

「はい、ポーズ」 という風に僕と雪乃さんが一緒に写るように自撮りしてくれた。おぉ、これは恋人みたいで嬉しいぞ。しかもその後に見たら、ちゃんと噴水やテレビ塔も入っている。上手いな。さすが女子。 それからさぁ行こうと歩き出す雪乃さんについて行く時には、何故かもう不安はほとんど消えていた今日は良い日になりそうだ。

幸せムードから一転。最もデート中に会いたくない人に遭遇…

雪乃さんとのデートが始まり、まずは待ち合わせ場所があった大通公園の中を一通り巡り、屋台で買った焼きとうきびをベンチに座って一緒に食べた。美味い!それにほのぼのでいいなぁ…。それから近場のオシャレなカフェでゆったりしつつ、僕の東京でのエピソードなどを色々聞かれた。僕に興味を持っているのかなと嬉しく思いつつも、雪乃さんは僕というより東京自体に興味を持っている様にも思えた。東京に憧れでもあるのだろうか。 その後には大通公園沿いにある、リニューアルしたばかりのオシャレな日用品や雑貨が売っているお店に行った。

結局今回は何も買わずに出たが、また来たいと思えるような良い雰囲気のお店だった。特にああいうお店は女性と行くと、あんなに楽しいんだなって改めて思えた。同棲していて一緒に使う物を選んでいる、みたいな気分にもなれたりするし! そんで大きな本屋にも行った。東京にいた時にも時折行っていたので、何だか少しだけ東京に戻ったような不思議な気持ちにもなった。それと互いの好きな本やお薦めの本を紹介し合うのも、中々に楽しかった。彼女の内面も、より良く知れた気がしたし。   そうして色々と巡って、もう暗くもなってきて頃に最後に夕食を食べようと、これまた雪乃さんがお薦めの店に向かった。

それはすすきのの中にあるイタリアンのお店で、すすきのの駅から歩いてすぐのすすきのの中心にあるお店だった。女子に人気で、値段もリーズナブルなのに凄く美味しいお店だと雪乃さんが絶賛するので楽しみにしていたのだが、思わぬ事態に遭遇してしまう。   満席で、お店に入れないというのだ。

  緊急事態で、急遽知っているお店へ。

「そう言えば前に来た時は友達が予約してくれてたんだ。どうしよう…」

雪乃さんが動揺し、困っているのが伝わってきた。それを見ていると残念な気持ちよりもどうにかしてあげたい気持ちが上回り、必死に頭を回転させる。考えろ、考えるんだ。あ、そうだ!喜多村に教わったあのお店に連れていこう。

アヒージョ

僕は雪乃さんを、そこからそう遠くないアヒージョが美味しいお店へと案内した。そして自分が前に食べて美味しかった、アヒージョをお薦めし、自分は別のリゾットにチャレンジしてみた。そしたら彼女は大喜びしてくれて、味にも満足してくれた。僕が新たに挑戦したパスタも美味しいし、このお店は当たりだな。ありがとう喜多村。そう思った直後だった。

「あれ、純じゃねぇか」

そう言って僕らの席に近付いてきたのは、喜多村だった。げっ、何でここに…。しかも喜多村は1人で店に来たようで、強引に僕らの間に入ってきたかと思うと、あれよあれよという間に一緒に座って食事をする流れに持っていってしまった。   空気読めよ!こいつの強引なとこ、本当に嫌い…   少し前の感謝の気持ちは完全に消え失せ、不快感でいっぱいになった。更に悪いことに、喜多村と雪乃さんは同じ札幌出身同士ということで話が合ってしまい、僕を置いて2人で盛り上がり始めてしまった。子供の頃にどこで遊んだとか、中学や高校はどこだったかとか、その頃にハマったローカル番組とか、そんな話で。

そんなの、僕には入る余地がないじゃないか!   そうしてイライラがかなり溜まった時、雪乃さんがお手洗いで席を外した。その隙にお前空気を読んで帰れよと喜多村に言いたかったが、今は喜多村に雇われの身であることも頭をよぎり、言えなかった。そしたら思わぬことを、逆に言われた。

「あの子いいな、気に入ったよ」

喜多村はハッキリと、そう口にしたのだ。それで僕は血の気が引いてしまった。喜多村が強引で、欲しいものはほとんど手に入れてきたことを知っていたからだった。

(中津 功介)


 

デート中に職場の上司に遭遇!しかも、相手を気に入ってしまうというまさかの展開!

果たして純と雪乃はどうなるのか…

第5話はコチラ

 

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