オタク女子のすすきの恋活記VOL.1:仕事も恋もちょっとイマイチ。25歳オタク女子の悩み


すすきのオタク女子の恋活期 アスナは西11丁目駅近くにオフィスを構える会社に事務員として勤めて3年。仕事は普通にこなしているが、今ひとつ工夫や努力が周囲に認められない日々。現在の仕事が自分に向いていないとは思わないが、楽しいとも思わない。片想い相手は「忙しい」の連発で将来性は薄いし、仕事も恋もこのままでいいのかと不安な毎日。できることならば変わるきっかけが欲しい。だけどどうすれば? 彷徨える25歳の自分探しと恋活が始まる。

少し前まではかなり真面目に仕事してたんですけど、先日、今の職場で頑張っても……。ってことがありまして。

同性の上司とちょっとした言い合いになっちゃって以来、残業を減らすことにしました。そしたら気づいちゃったんですけど、私って暇なんですよ。18時に退勤して街に出ても、そんなにやることがない。だから今日は友達のチカを久々に呼び出してご飯に付き合ってもらうことにしました。すっごく嫌なものが家に届いたからです。

「こんな年賀状が来たの。チカのところにも来てない?」

「おお、きたよ。タナカの結婚報告でしょ?」

すすきのにある、赤が基調の照明がまぶしいお店で、テーブルに置かれた一枚の年賀状が光を浴びています。 そこには、私たちの高校時代の共通の友人――とはいっても同じ部活だった程度の人のウェディングドレス姿があります。 ここまでならただの新婚からの年賀状ですし、私も別に気にしません。

だけどこれに関しては、そうはいかない理由がありました。彼女と一緒に写る男性もまた私たちの同級生で、当時、私も良いなって思ってた人だったからです。 でも今や彼の妻となったタナカは、昔私が彼を「格好いいね」って言った時「私そういうの興味ないし」って返すような奴だったんです。それが実は隠れてちゃっかり付き合ってて結婚までしちゃうとか、なんだよ! って思っちゃったんです。 すすきのオタク女子の恋活期     彼は転勤の多い仕事らしくて、ふたりは春から道東に引っ越すそうです。しかもタナカは妊娠中。ただただ羨ましい。一方私は毎日やりがいのない仕事をこなして、好きな人とはまるで進展せず。タナカと自分のあまりの違いに悲しくなって、チカに話を聞いてもらおうと思ったんです。 しかし、私の話を一通り聞き終えたチカは複雑そうな表情です。仕事疲れがたまりにたまっている金曜の夜に、いきなりこんな話から始めたのが良くなかったんでしょうか…良くなかった気がします。さらには私を見て、たしなめるように言いました。

「アスナはちょっと、他人のことを気にしすぎだよね。毎日会う人ならまだしも、タナカ……もうタナカって苗字ではないみたいだけど。とにかくこの子とはもう会うこともないと思うのね。そんなほぼ無関係な人のことばっかり考えて、1か月以上前に届いた年賀状のこと、2月に入っても忘れられなくて、ムカついたり悲しくなったりなんて……。そんなのもったいないよ」

言われてみるともっともです。

周囲が気になりすぎる。確かにチカの言う通り、私にはそんな一面がありました。

  人のやることが気になって、やたらと比べてはこうして落ちこんで。無駄に相手の顔色を窺った結果、「喜びそうなことを言おう、嫌がられるようなことはやめよう」と、本当に思っていることが言えなくなってしまったり。 高校のときもそうでした。 だから彼には「いい子」とか「優しい」とは言われた気がしたんですけど、おいしいところを持っていくのはこの通り別の子。だから全然得しないし、そもそも相手の反応を見てやってるので、本性の私は少しもいい子でも優しくもないという。そういった、どう考えても良くないことを続けていました。

「タナカと彼のことはもう忘れろ。この結婚はあたしもどっちかって言うと面白くないから一緒に忘れるし。それより、ヒロアキ君とはどうなった?」

「どうもしないよ。学会で来月アメリカ行くから、発表の準備で忙しくて会えないってさ」

チカの関心は、タナカの結婚より私の恋愛にあるようです。それはとても嬉しいのですが、残念なことにいい報告はありません。話題のヒロアキ君は私の片想い相手で現在大学院に通っていますが、院の忙しさに翻弄されまるで会えない日々が続いていたからです。 いいえ、はっきり言えば私とはあまり会う気がなさそうな感じです。彼とは大学以来仲が良いのですが、もう何年も友人止まり。自分でもこれはもうどうにもならないと理解しつつ、私は諦めきれずにいました。

フルーティ(ぽっぷかるちゃーふぇすた)  「じゃあ、他にいい人は? この前、あの、名前何て言ったっけ……とにかく、同じアイドル好きな人と一緒にライヴ行くって言ってたじゃん」

「行きましたとも。でも、あの人が見てるのは常に自分の推しメンだけだから」

そうそう。申し遅れましたが、私の唯一と言っていい趣味は、アイドルの曲を聴いたりライヴを観たりすることです。とはいっても好きなのは異性ではなく同性のアイドルで、少し前までは、とある大人数アイドルの握手会や、「まんだらけ」でやっているファン同士のグッズ交換会に積極的に参加していました。

なので周囲は当然男性が多く、友達は「オタク男性は恋愛対象にならないの?」なんてよく聞いてきますが、あれは悪い質問です。私ではなく、彼らが私を恋愛対象にはしないんです。 まず、アイドルが好きな男性って可愛い子ばかり見ているから目が肥えてるし、稼いだお金は彼女たちに使うので、わざわざ一般女性に接近していったりしないんですよ。

第一会ってもお互い趣味の話しかしないから、個人的な話題に及ぶこと自体少ないし…。女性アイドルファンの女性は少数派なので、みなさんとても大切にしてくれますし、優しいんですけどね。あくまで仲間って認識で、恋愛対象には見られていないと思います。 さらに言えば、私は現在アイドルファンの集まる場所にもあまり行っていません。だって私が特に好きだった子たちはもう…。

「そういえばあの子は辞めちゃったから、オタクの集まりもあんまり行かなくなったんだっけ。あれは災難だったね。まさか誕生日に」

「その話はやめてー」

私が好きだったアイドル2名のうち1人目は、去年スクープされた男性芸能人とお付き合いするため「恋に生きる」とグループを去りました。 そして2人目は、去年の私の誕生日、私がヒロアキ君にドタキャンされて泣きながら帰ろうとしていた頃、テレビの歌番組で「女優さんになる」とグループ卒業を発表しました。

恋と夢…どちらも私の手元にはないものです。

ファンですから、1人目にスキャンダルの噂があることも、2人目がアイドルより女優としての活動に気持ちが傾いていることも知っていました。 だからふたりが卒業宣言したとき、私は「残念だ」というより「羨ましい」という気持ちで彼女たちを見つめていました。今の立場を捨ててもなりたいものや、やりたいことがある。そんなふたりが眩しくて、私にはそんなものはないことに気づいて。 だから男の人の目にも魅力的には写らないのかなあって。ひとり悲しくなったのを鮮明に覚えています。

できることなら私も大好きなアイドルたちみたいに、恋に生きてみたり、夢を追いかけたりしたいです。

もっとも、そんな勇気も叶えたい夢もないから今に至る訳ですが……。 悲しい誕生日を思い出すとつい沈黙が続き、チカも完全におろおろしています。するとそこで、助け舟を出すかのごとくチカの携帯に着信が。 人と会うときは携帯を見ないチカですが、私は「出ていいよ」と促し、その間に気持ちを落ち着けることにしました。 やがて、話し中のチカが不意に紙ナプキンに文字を書いて差し出します。

どうやら話し相手は今近くにいて、暇ならチカと一緒に飲みたいと言っているようです。 「悪い奴ではない。嫌なら断わるよ」続けてチカはそう書き込みます。突然の展開です。普段の私なら「今日はちょっと……」と言っていたかもしれません。でも、その時は不思議とそうはしたくないと思いました。

何でもいいから、この残念な現状を変えてくれそうな出会い。そんなものがないかと、ちょうど思っていたからです。

「来てもらおうよ」私は言いました。チカは一瞬意外そうな顔をしましたが、頷くと電話相手に店名を告げます。 ところで来るのは男性と女性、どっちなんでしょう。聞かずに快諾したことを若干後悔しつつ、私は答え合わせの瞬間を待つことにしました。

(眞宮悠里)


不安を抱きながらもどこか期待をしているアスナ。チカの友人は、果たして…

 

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