すすきの恋愛カウンセラーvol.1:仕事に恋に全力疾走、27歳大手新聞記者の新たな出会い。

すすきの恋愛カウンセラー

「新聞記者って言えば、みんな『すごいね』って言ってくれます。僕自身はそんなふうに思ってないんですけどね…」

マサヒロは某大手新聞社に勤めて5年目になる。昨年から、札幌近郊の地域欄を担当している。 記者と言う知的な職業に就く彼は人当たりが良く、どこか体育会系の香りがする。マサヒロの世代はいわゆる『ゆとり世代』。同僚や後輩には“草食男子”が多いようであるが、マサヒロは仕事にも恋愛にも積極的である。しかし、色々と煩悩も尽きない。そんな、大手新聞社で働く27歳のライフスタイルとは!?

同僚からは営業の方が向いてるって言われてます…

僕も含めて、新聞記者って毎日締切りに追われてます。忙しいのは週末に限ったことではありません。定時ってあって無いようなものです。もうとっくに退社するはずの時間は過ぎてますが、平日だって、20時くらいの時間ならまだデスクにかじりついて原稿を書いていたり、取材の準備なんかもしています。

日によっては、現場で取材していることもあります。 今日は金曜日です。先ほどから課長のYさんの熱視線を感じるのは気のせいでしょうか…ぎこちなくて、ソワソワしているようにも見えて、僕を飲みに誘おうというYさんの魂胆が見え見えです。案の定、Yさんがこちらに歩み寄ってきました。

「おう、マサヒロ、仕事終わったか?」

出たー!お決まりのパターン。終わってたらとっくに帰ってますよ!と言いたいところですが、上司に嫌われても面倒なので普段は「あとちょっとですね…」と答えるようにしているんです。こう答えると必ず…

「飲みに行くぞー!」 という展開になります。

やっぱり、本日もご指名をいただきました(笑)。 Yさんは直属の上司ではないんですけど、よく飲みに誘ってくれて、いつもおごってくれます。安い居酒屋とかじゃなくて、結構高いお店もです。『最近の若者は会社の上司との飲み会を好まない』という論調のコラムを他紙で何度か読んだことがありますが、同僚や後輩は確かにそうです。僕は結構好きです。会社の飲み会となれば、上司が帰るまでは絶対に最後まで付き合いますし、「飲みも仕事のうち」って思っています。

だって、人事評価をしてくれる人たちには好かれていた方が得じゃないですか!

同期や後輩には理解されないんですけど、僕は飲み会の席では徹底的に盛り上げ役になります。上司がカラオケを歌っていればタンバリンでリズムを取りますし、歌う曲も上司の世代に合わせて選曲しますしね。そういう地道な努力をする同僚や後輩って本当に少ないんです。

同僚からは記者じゃなくて営業に向いてるって揶揄されることも結構あります。 僕に言わせれば、営業だろうが記者だろうが、社会人力が必要だと思うんです。小難しいジャーナリズムを語る部下よりノリが良い部下の方がかわいいじゃないですか?堅物の上司も人ですからね。

えっ、そんなの疲れないのかって?それは仕事ですから当然疲れますよ。でも同僚にはないそういう部分があるからYさんはいつも僕を指名してくれると思うんですよね。悲しいことに、人事評価で得したぜ!って感じたことはこの5年ないんですけどね。Yさんとは色んなお店に行きますけど、今日はどんなところに連れていってもらえるのかなぁ…

お決まりの愚痴を聞くのも部下の仕事!相槌はテンポが肝心です!

すすきの恋愛カウンセラー残っていた仕事を早々に片付けて、Yさんのデスクに行くと餌を待っている子犬のような目で僕を見上げました。どんだけ行きたかったんだよ(笑)思わず噴き出しそうになりました。すすきのに着いて僕とYさんはまずは腹ごしらえ。最近できたスペインバル風のお店でご飯を食べながら軽く飲んだ後、Yさんお勧めのニュークラブに行くことになりました。最初からそっちに行きたかったのではないでしょうか。

ニュークラブってすすきのならではの単語のようですが、これ、東京でいうところのキャバクラです。単純に、ドレスアップをした綺麗な女性とお酒を楽しむ場です。Yさんとは何度もニュークラに行っていますが、毎回違うお店です。 今日はすすきのの中でもかなりの有名店のようで、Yさんはやたらと誇らしげです。薄暗い店内ですが、大きなシャンデリアがあり、壁際にはワインや高級なお酒がディスプレイされていて普段いくお店よりも明らかに高そうな雰囲気です。

僕らが席に着いて間もなく、黒服が2人の女性を案内してくれました。確かに、高級店というだけあってお綺麗にな女性です。 Yさんは開口一番、いつものお決まりのセリフ。

「おい、マサヒロここはおさわりは禁止なんだからな!スケベ根性出すんじゃないぞ!」

「わ、わかってますよ!僕だってそれくらい!」

女性2人はそのやり取りを見てクスクス笑っています。こんな些細なやり取りが、Yさんなりのすべらないネタのようで、いつも同じパターン。勿論、僕だってそれくらいわかっていますし女性たちもそんなことくらいわかっています。

Yさんは女性を横に座らせて酒を飲み始めると、さっそく仕事とは何かを語り始めました。初対面で見ず知らずの方の前で、これだけ熱く仕事を語れるYさんにはいつも感心してしまいます。女の子達も、「うんうん」って言って聞いてるけど、どこまで頭の中に入っているのやら。

実はYさんってお酒に弱くて、飲めば飲むほどロレツがまわらなくなっていくんです。 1歩引いた距離からその姿を見ていると、あまりに滑稽で笑いそうになってしまいます。写メじゃなくて、ムービーを撮りたくなるほどです(笑)。勿論、そんなことはできないので、テンポ良く相槌を打って、感心しながら話を聞いている部下を演じます。

酒の場で上司を立てるのは部下の仕事ですからね!

「わかるかぁ…マサヒロぉ…俺はお前に期待してるんだぞぉ…」

Yさんは酔ってくると隣についた女性を見ながら話すようになります。ただし、僕が相槌を打ってないと突然指をさして話しかけて来ます。そんな時には、多少オーバーリアクションで対処します。 「本当っすか?感激です!今日はそれを聞けただけで満足です!」 多少、ワザトらしくてもこの人にはこれが響くということを僕は知ってます。こういうところが同僚から営業っぽいと言われる理由なのかもしれません。そんな、ことを考えながら水割りを飲んでいると僕の隣についた女性にこんな事、言われたんです。

「心ここにあらずって感じ。マサヒロさんってわかりやすいですね(笑)」

 

えっ、どうしてわかったの…

 

隣にいる綺麗な女性に心の中を覗き込まれたような感覚。ちょっとドキドキです。

ニュークラブのイメージフミカ、と名乗った彼女は、このお店でNO.2の人気嬢です。表情や仕草は大人びているけど、実際には僕よりは5歳くらい若いようです。職場や友人にはポーカーフェイスでわかりにくいといわれているのに恐るべし…すすきのの女。

普段は聞き手に徹することの多い僕も、自分のことを理解してくれているようで、何故だかいろいろと話をしたくなってきました。職場での人間関係も、大学時代から付き合っている彼女と上手くいっていないことなどまでも…

「彼女の事は好きなんだけど、急かされているようで面倒なんだよね!仕事だってあるのに…」

アルコールのせいか、それともフミカが聞き上手だからなのか、付き合っている彼女には言わないような話がどんどん飛出してきます。愚痴っぽい男とは思われたくないんですけど、普段よりも会話が弾むので前のめりになってしまいます。その場にYさんと一緒に来ていることを忘れてしまうほど、僕はフミカとの会話に集中していました。

「考えすぎなんじゃないの? もっと軽く考えたらいいのに…」

ありふれた言葉のようですが、フミカにそう言われると妙な説得力があります。

「面倒でも好きならもっと彼女の言うこと受け止めてあげればいいし、そうじゃないなら適当にクラブにでも行って可愛い子捕まえてたら?マサヒロさん、自分が思っているよりモテると思うよ…」

すごく当たり前の言葉だし、客だから僕を持ち上げてくれたのかもしれない…でも、フミカの言葉を聞くと少なからず自信が持てたような気がします。男って単純ですね。綺麗な女性に少し褒められるとこんなに気持ちが良いものなんですね。だからこそ、Yさんみたいな人はすすきのに来るとニュークラに来てしまうんだろうなぁ…

今付き合っている彼女と今後、とどうなりたいんだろう。結婚したいのか? それとも、このままなあなあな感じで自然消滅するのを待っているのか? このまま結婚してしまえば、数年後にはYさんみたいに、ニュークラに来て嫁の愚痴をこぼす男になってそうな気がする。

「悩んでるより、何か行動した方が気持ちがスッキリするはずですよ。マサヒロさんは頭が良いから色々考えちゃうと思うんですけどね・・・ちなみに私はそういう男性好みですよ!」

今日は上司のYさんを持上げるためにニュークラに来たのに、Yさんそっちのけでフミカとの会話にのめりこんでいきました。勿論、大学時代からつきあっている彼女のことは大切です。フミカとの会話は完全に別物。僕にとってフミカは恋愛カウンセラーのような存在です。これはヤバイ、また来てしまうかも…

 

(ノルベサにて編集)


次回、マサヒロの彼女が登場!どんな波乱が待ち受けているのか!?

 

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