すすきのビギナーの恋vol.3:初めての街コンで意外と美味しい思い…

すすきののバーカウンター

前回までのあらすじ

 

転職し、30歳にして初めて東京を出て札幌で暮らし始めた純。観光気分で札幌での生活を満喫していたが、段々と知り合いが少なく恋人もいない状態に寂しさを感じるようになる。更に新しい仕事が本格的に始まると、日々が一気に慌ただしく過ぎていく。一緒に飲みに行ったり食事に行ったりできる相手がいない。そのことで寂しさをつのらせた純は1人でバーに行き、マスターから札幌で行われる街コン『街コン』の存在を知らされる。そこに同じく1人でバーに来ていたお客さんが話しかけてきて、一緒に行こうと提案してくるのだった。

 

せっかくの縁だから、一緒に街コンに行ってみよう…

 

「じゃあ一緒に参加しません?」

そう話しかけられた時、すぐには自分が話しかけられているのだとは気付けなかった。いくらバーとはいえ、見知らぬ他人にいきなり話しかけられることに、僕は慣れてなかった。そのせいでマスターに「話しかけられてますよ」と、気を使わせてしまった。

え、僕?!僕に話しかけてんの?と戸惑う僕とは対照的に、その人はとても落ち着いていた。ニッコリと笑い、隣に座っていいかと聞いてきた。それを了承すると、スマートに席を移動してきた。お、大人だな…。そんな風にも思ったが、見た目の年齢は僕とそう変わらなそうだ。

隣に座った彼と、色々と話す。彼の方から色々と質問したり語ったりと話を展開してくれたりで、とても話しやすかった。笑顔も爽やかで、男の僕から見ても好感の持てる顔立ちだし。そんな彼の名前は直樹で、歳は26歳。仕事は医療メーカーの営業。神奈川出身で転勤によって札幌に来てまだ1年で、知り合いが少なくて一緒に街コンとかに参加できる男の友達が欲しかったとのことだった。年下かよ!しかも4つも!と叫びそうになったが、その衝動はグッと堪えた。ただでさえ年下に話をリードしてもらっているってのに、これ以上カッコ悪いとこは見せたくない。にしてもこの人当たりの良さやトーク力…こういう人こそ営業に向いているんだろうな。

「じゃあ一緒に行くってことでいいですか?」

流されるままに了承し、連絡先を交換してその日は別れた。後日には僕の分まで申し込みを済ませてくれ、当日の待ち合わせ場所や時間とかもテキパキと決めてくれた。で、デキる男だなぁ。そんな風に思い、そんな男と出会えて一緒に行動できるのを嬉しく思った。社交的で1人でも積極的に動ける人間だったら、別に誰といようと大差はないかもしれない。でも僕のように受身な人間にとっては、誰と一緒にいるのかでその後が大きく変わったりもするのだ。思えば東京にいる時にもそういう人らに助けられていたし、そういう運だけはあるのかもしれない。自分の幸運を噛みしめつつ、それを大事にしてしこうと心に決めた。

いよいよ、街コン当日。服装も気合いを入れて参加してみる…

すすきのラフィラ前

 

楽しみがあるとその日が来るまでは長く感じるが、その日が来るまでの仕事を頑張る活力にもなってくる。だから僕は仕事を元気にテキパキとこなすことができた。

「いいねぇ、その調子だよ」

喜多村もそんな風に言って褒めてくれ、上機嫌だ。だからそんなに疲れを溜めずに、その日を迎えることができた。僕は精一杯のオシャレをし、直樹くんとの待ち合わせ場所であるすすきの駅のラフィラ前へと向かった。

「お、決まってますね。カッコ良い」

合流して開口一番、直樹くんに言われた。そしてすぐに恥ずかしくなる。直樹くんの方は対照的に、カジュアルでラフな服装だったからだ。しまった、気合い入れ過ぎた…。街コンのようなもの自体初めてだったのもあり、ドレースコードとかも一切ないのに、スラックスにYシャツでジャケットを羽織るという、まるでパーティにでも参加するような服装で来てしまった。あぁ、帰って着替えたい。そう思ったが、そこまで時間的余裕は無い。直樹くんと一緒に、街コンの会場に行く。

気恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、会場についたらその気持ちは吹き飛んだ。同じように気合い入れた風の服装の人が何人もいて安心した、というのもあるが、それより圧倒されたのは人の数と盛り上がりだった。

すごっ…!

VANITY じゃんけん大会 決勝

戸惑い、思わず田舎者みたいにキョロキョロしてしまう。これが街コンかぁ。多くの人で溢れ、様々な場所で盛り上がっている。直樹くんが「日本最大級の街コンで、フェス(お祭り)みたいなものでもある」と教えてくれた。それも納得の熱狂的な様子だ。いろんな要素もあるかもだが、やるなぁすすきの。

中々話しかけれず、せっかくのチャンスもいくつもふいに。

街コンに参加してすぐは、女の子に話しかけたりするとかの出会いに繋がる行動はせず、色々なものを楽しんだ。僕が街コンの様子に興奮したのを察し、直樹くんもそれに乗って一緒に楽しんでくれた。DJブースではしゃいだり、自分は男性なので体験できないけど美容ブースとかの様子を見たり、いくつもの飲食店を見て周ったり、屋上の観覧車の存在を教えてもらったりした。そしてそういうのには満足し、ついに一つの店舗で腰を据えて飲み食いすることに決める。

夜景が見渡せて雰囲気も良いお店で、腹も減っていたのでパスタやピッツァも食べつつ店内を物色。でも僕らが出遅れたのか、すでに店内でフリーの女の子たちは少なかった。たいていは他の男のグループと話している。しょうがないので、ここではお腹を満たして程よくお酒に酔うための店と開き直った。そしてその目的は果たし、次のお店に移動。

次に入ったのはラウンジバー。普段は恋活バーとして営業しているらしい。ここは立ち飲みのお客さんが多く、混んで大いに盛り上がっていた。ここならイケそう。そう思いつつ、フリーの女の子たちを見つけていいなと思っても、怖気づいて中々話しかけられなかった。だけどそこで、直樹くんが躊躇せず話しかけて繋げてくれた。

あぁ、やっぱりできる子だ。君と来て本当に良かった!

そんな流れで女の子と話しつつ、最初は東京出身で札幌に来たばかりということで興味を持ってもらって、そこそこ話も盛り上がった。そしてとりあえず連絡先を交換して、今度はまた違う人たちと話す。そういうのが何回もあった。でも気付けば、話の中心は毎回直樹くんだった。でもそれも仕方ない。同じような境遇でより社交的で話が上手く、その上で話まで上手い人がいたら、そうなるのも仕方がない。社交的な人と一緒に行動するとこんなデメリットもあるんだったな…と思い出し、そして思い知らされた。

そしてとうとう、直樹くんは1人の女性と長々と話出し、盛り上がっていった。良い雰囲気でもある。こりゃここにいたら、邪魔者だな。そう思って僕は店の端っこに行き、1人でボーっとしながら店の様子を眺めた。そうすると皆が楽しくしているように見え、寂しい気持ちになった。1人でいる時よりも寂しい気もする。

恋パ新年会

 

ええぃ、こうなりゃヤケだ!

今日は酒をたくさん飲む日にしよう。そう思って持っていた酒を飲み干し、新たに注文するためにカウンターへ向かった。そしたらそこには、長蛇の列ができていた。酒をたくさん飲むこともできないのか。ガックリしていた僕は、突然後ろから声をかけられた。

しかも話しかけてきてくれたのは、まさかのドストライクの女の子!

「凄い混んでますね」

そんな声がして後ろを振り向くと、僕の好みのタイプの女性がそこにいた。背は僕より10cmくらい低く、フワッとした服装で髪型はボブ。何より小動物みたいなクリッとした目が、とても可愛らしかった。あわわと戸惑う僕に、彼女は更に話しかけてくれる。1人ですか?お名前は?とか、色々と。その流れで彼女のことも色々と知ることができた。名前は雪乃で、歳は27歳。僕と同じように2人で参加していたが、もう1人が男性と良い感じになってきたので別れて行動しているのだという。

「良かったらもっとお話しませんか?」

雪乃さんからそう提案してくれ、喜んで乗っかる。でも雪乃さんみたいな可愛らしい人がどうして自分から僕なんかに、という疑問はあった。それで素直に聞いてみると、ちょっと前まで大勢の男の人にがっつかれて話されて疲れてしまい、のんびり一緒に過ごせそうな人を探していたのだという。1人でボーっとしていたことで、のんびりしてそうだと思ってくれたのかもしれない。

やった、ラッキー!こんなこともあるんだな。

雪乃さんとは好きな本や映画などが近く、食べ物や休日の過ごし方の趣向とかも似ていた。だから話していてとても心地良く、一気に雪乃さんのことを気に入っていった。思い上がりかもしれないが、雪乃さんも僕のことを気に入ってくれているようにも思える。そして屋上にある観覧車の話題になると、それなら一緒に乗りましょうかという話になった。おぉ何という展開!嬉しすぎるぞ。

興奮する気持ちを抑えきれず、ドキドキしながら屋上へ向かった。でもそしたら、残念なことにもう観覧車の営業は終わってしまっていた。腕時計の時間を見てみたらビックリ。もうかなり遅い時間になっていた。街コンもそろそろ終わる時間だ。あぁ、この時間ももう終わりか…。残念に思っていたが、次の瞬間の雪乃さんの言葉で救われ、また一気にテンションが上がった。

「良かったら連絡先交換して、今日のリベンジを今度しましょうよ」

こんなことを女性から言ってもらえるなんて、僕はなんて幸運なんだ。

(中津 功介)


誘われるがままに参加してみた街コンで、思いがけない出会い!運命なのか…

第4話はコチラ

 

 

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