すすきのビギナーの恋vol.5:あの男に負けてたまるか…焦りと告白



ビストロます家

前回までのあらすじ

30歳ですすきのでの新しい生活を始めた純。知り合いも少ない中で生活をより充実させるため、恋人を見つけるために活動していく決意する。参加した札幌の街コンで好みど真ん中の女性、雪乃と仲良くなる。初デートでは札幌出身の雪乃に様々なスポットを案内してもらいつつ満喫し、純は幸せな気分でいっぱいだった。しかしデートの締めのディナーを楽しんでいると、純の昔からの友人であり、雇い主でもある喜多村と偶然出会い、強引に同席されてしまう。喜多村は同じ札幌出身ということですぐに雪乃とも仲良くなっていき、挙句には『気に入った』という発言までして純を焦らすのだった。

 

上司が恋のライバル!?そりゃ、落ち着きませんよ…

「あの子いいな、気に入ったよ」

喜多村のその言葉が、僕はずっと頭から離れなかった。それは週が変わって新たに仕事が始まってからも同じだった。おかげで仕事にも集中できず、進みも遅いしミスも何回かしてしまった。喜多村はそれくらいでは怒るようなタイプではないが、「しっかりしろよ」と心配はされてしまった。

お前のせいだよ、喜多村!!

もちろんそんなこと本人に言えない。喜多村が携帯をいじり出した時なんて最悪だ。もしかしたら雪乃さんに連絡しているんじゃ…さっそく強引なアプローチを展開しているんじゃ、と気になって気になって仕方なくなり、ついジッと見てしまう。見過ぎて喜多村に気付かれ、「何だよ?」とちょっと不快そうな反応をさせてしまった程だ。

 

このままじゃマズい。僕も行動しなきゃ…

焦ってそんな想いにかられた僕は、その日の仕事が終わったらすぐに行動に出た。雪乃さんにLINEを送った。この前は楽しかったです。よければぜひ今週末もどこかに行きませんか?という風に。返事を待つもどかしい1時間をベッドの上で悶絶しながら耐え、やっと来た返事にはこう書かれていた。

「私も楽しかったし、ぜひまたご一緒したいです!でもすいません、今週末はすでに予定が入ってしまってるんです。」

恋に悩む男

あぁダメだ、終わりだ。これは脈無しだ。もしかしたら今週末の予定ってのも、喜多村との予定かもしれないし。そんな風に絶望しつつも、一方で諦めきれずに思う。

本当に脈はないのか?街コンではあんなに積極的だったのに…

とりあえず直樹くんに聞いてみようと思い、電話してみる。そしたら笑われてしまった。いくら何でも早とちり過ぎると。恋人になってもいないのに、毎週会えないくらいで凹むことはないと。

「俺だってそんなのしょっちゅうだけど、そっから盛り返したことも何度だってありますよ」

そんな風に言われ、確かにそうだと思った。そしていい歳してネガティブな思考になり過ぎてしまっていた自分を恥ずかしく思った。少ないながらも恋愛経験もあって、30歳にもなっているのに何やってるんだ、僕は。

 

やっぱり脈はあったのかもしれない…再びデートの約束!?

直樹くんの励ましによって立ち直った僕は、勇気を振り絞って再び雪乃さんに誘いの連絡をしてみた。今週がダメなら、来週はどうですか?そんな風にストレートに聞いてみた。受け身で奥手な僕からしたら、これは相当頑張っている。でも、しつこいと思われるかな…ドキドキしつつも気長に待とうとも思っていたが、想像より早く、送ってから10分くらいで返事が来た。しかもその内容を見て、思わず興奮して飛び跳ねそうになった。

 

いいですよ。来週なら大丈夫です!

よし、まだ脈はある!でも油断はできない。喜多村に先を越されるわけにはいかないから。もし先を越されてしまったら、喜多村は無神経に雪乃さんとのラブラブっぷりをアピールしてくるだろう。果てには結婚式にまで呼ばれて…

あぁ、考えただけでゾッとする!頑張ろう、本当に。

そこからの日々はその前よりも落ち着き、仕事をしっかりとやれるようにはなっていた。でも相変らず、喜多村の動向は気になる。気になって「今週末は何かするの?」と聞いたりもしてしまった。でも喜多村にはぼやかされ、まともに答えてもらえなかった。

 

ぼやかすってことは、やっぱりそうなのか?気になりつつも、それ以上は聞けない。平然とした様子で仕事をしている姿が、雪乃さんとのことが余裕で自信があるから、という風にも思えてイラついたりもしてしまう。

クソッ、この男には負けないぞ。

スマホをいじる男

そんなこんなで日々を過ごしていき、ついには二度目のデートの日を迎えた。今度は僕のプランでデートを進めることになっていて、それが余計に不安を大きくもさせたが、どうにか落ち着けて家を出た。

大丈夫だ、落ち着け。平常心、平常心。直樹くんにも太鼓判を押してもらったし、自信を持つんだ。

そう言い聞かせながら待ち合わせ場所のラフィラの前に向かい、時間よりも少し早く着いた。時間ちょうどくらいに、雪乃さんは来た。今日もフワっとした雰囲気の服装で笑顔も浮かべ、とても可愛らしい。これをこの先ずっと見ていられるよう頑張ろうと、そう思わせてくれた。

 

色々考えたけど、やっぱり最後はあの場所に…

合流してまず、ビルの7、8階にある映画館に移動して評価の高いアクション映画を観た。プランを考えた時、僕は話題の恋愛映画が良いのかと思ったが、直樹くんが恋愛ものは当たり外れが多いし男女で意見が食い違ってしまうこともあるから、何も考えずとも見て楽しめるアクションものが良いとアドバイスをくれたので、素直にそれに従った。

いかにも自分だけでそれを選んだかのように振る舞って雪乃さんに薦めたが、それくらいはいいだろう。もの凄い感動があったりしたわけではないが、僕も彼女も映画を楽しめた。映画館のスクリーンで見る大迫力のアクションシーンというのは、興奮させてくれるし気持ちを上げてくれる。

その勢いのままに、ゲームやスポーツの複合施設に行き、リズムゲームやダーツ、ビリヤードなどを楽しんだ。どれも僕と雪乃さんの実力差が程よく近かったことが幸いし、盛り上がったし楽しめた。汗をかいて少し髪が乱れた姿とかも、女性からしたらあんまり見られたくないかもしれないが、僕は見られて良かった。本気で楽しんでいるのが伝わって、好感を持てたし。

そうしてお腹を空かせた状態で向かったのは、前のデートで入れなかった人気のイタリアンのお店だ。雪乃さんは、「あれ、ここは…」と驚いた様子を見せる。僕は少しわざとらしいかな…と不安になる。デートが決まった約2週間前から予約していたのも、やる気満々みたいに思われるかもしれないし。

でもその心配は無用で、彼女は素直に喜んでくれた。料理も人気なだけあって、とても美味しかった。雰囲気も良く、つい調子に乗ってワインも飲み過ぎてしまった。「純くん大丈夫?」と心配されてしまう程に。

そのイタリアンのお店も出ると、僕は今日のデートで一番行きたかった場所に雪乃さんを連れてった。雪乃さんと出会った日から気になっていた場所だ。それは街コンで雪乃さんと出会った日、最後の最後で乗ろうとして乗れなかったノベルサの屋上にある観覧車だった。リベンジできましたねと雪乃さんも喜んでくれ、僕も嬉しく思う。

ノルベサの観覧車

観覧車という密室の中に2人で良い雰囲気で、見える札幌の夜景もキレイ。気分は自然と盛り上がっていた。そして酒に酔っていたこともあり、強気に覚悟を決めることができた。雪乃さんを喜多村に、他の奴に渡さないためには自分の気持ちを伝えるしかないと。

雪乃さん、僕と付き合って下さい

唐突に、僕はそう言い放っていた。

 

もう寂しくはない!これからのすすきのライフにワクワクする…

 

決意の告白の結果は、肩透かしをくらうものだった。

「出会ったばかりだし、まだ友達でいたいな」

そう言われてしまったのだ。その次のデートの約束も取り付けられたので脈無しというわけではないんだろうが、本当の意味でのこの恋の結果が出るのは、もう少し時間がかかりそうだ。冷静になれたという意味では、良かったのかもしれないとも思えている。焦らず少しづつ進めていこう。

それと喜多村に関してだが、こ「あの雪乃って子とは上手くいってるのか?」と聞かれてしまった。まぁねと強がりつつ、お前はどうなの?と聞いてみた。なんと、喜多村は連絡を取ってないという…

え、何で?気に入ってたんじゃないの?

そう問い詰めると、「それは良い女だから、お前の恋を応援するって意味だよ」と言われてしまった。何だ、そうだったのかよ。心配してピリピリして、損したわ。

それから直樹くんは、また街コンとかがあったら一緒に行こうと言ったりもしてくれるし、たまに会ってる。これからもすすきのでの生活は続くが、もう寂しくてつまらないとか、そういうことにはならなそうだなと思えた。やっぱりすすきのという街は僕にとって最高の場所になっていくことだろう…

(中津 功介)


 

fin

 


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